1. はじめに
  2. GSR センサーとは
    1. 磁気センサーについて
    2. GSRセンサーの性能と将来展望
    3. 何故 GSRセンサーは画期的な性能を持つのか
    4. GSR 素子の原理と構造
    5. GSR センサーの特徴
    6. GSR センサー成立の条件

  3. 事件について
    1. 愛知製鋼の主張
    2. 学会の場で技術論争をするべきです
      1. GSR センサーと MI センサーは原理が全く異なる
      2. 愛知製鋼の「ワイヤ整列装置」では GSR センサー用の素子は作成できない
      3. ホワイトボードに GSR センサ開発に必要な装置の仕様を示していた

  4. 参考資料 (論文・専門図書・研究会テキスト・特許),Wiki

1. はじめに

GSR センサーは本蔵さんが発明した高感度磁気センサーで,原理特許は日米両国にて権利化され,従来の MI センサーとは根本的に原理・製作工程が異 なり,性能は MI センサーの100倍を有し,今後自動車用、生体磁気検出、生体内の位置検出などへの応用に期待されています。

本蔵さんは愛知製鋼にて MI センサーの開発と商品化を大きく牽引・貢献し,愛知製鋼専務を退任された後,ベンチャ企業(MDC)を立上げ,名古屋大学 との共同研究を経て、 MI センサーの限界を飛躍的に突破し、 GSR センサーを発明しました。

ところが愛知製鋼は,原理・製作工程が根本的に異なるにも拘わらず,一見その外観と工程が似ていることから,「 GSR センサーは MI センサーと同じ」 と誤解し、「愛知製鋼の秘密を漏洩した」として,不正競争防止法違反にて本蔵さんを刑事告訴(1次告訴)しました。

この告訴は不起訴となりましたが、本蔵さんが GSR センサー開発のために業者と議論した際にホワイトボードにメモした図等が「愛知製鋼の秘密を漏洩 した」として告訴(2次告訴)し、現在争われています。

これらはいずれも誤解によるもので、その不当性を明確にするためには GSR センサーを理解することが必要と考え、以下にその解説を行います。なお、 GSR センサーは世界的に認められ、本蔵さんは本年8月に開催される「2018年電磁波工学研究の進歩に関する国際会議」(世界最大規模の電磁波工学の学会)にて招待され講演を行います。(別添資料)

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2. GSR センサーとは

2.1. 磁気センサーについて

私達の周りには下図のように微弱な生体磁気から地磁気・工業用磁気など広範囲な磁気が存在しています。 GSR センサーは磁界を高感度で検出するセンサーです。

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2.2. GSR センサーの性能と将来展望

GSR センサーは MI センサーに比較して60〜150倍の性能を持つ画期的な高感度磁気センサーです。

GSR センサーは最も有望な超高感度磁気マイクロ磁気センサーとして、無人運転自動車、ナビゲーション、モーションセンサー、生体磁気検出装置、生体内モバイル機器など多方面のIOT分野で用途に応じて商品開発が進められています。(下表)

1 自動車用

MI センサーは測定レンジが狭く、自動車用には不向きでしたが、 GSR セ ンサーでは測定レンジを7倍に拡大でき、無人運転車の開発に適用できるレベ ルになりました。運転手の代わりに人口知能でハンドル・アクセル・ブレーキの微妙な制御を行うためには高速・高精度な磁気センサーが必要で GSR センサーが最も適しています。

2 電子コンパス

電子コンパスとは地磁気を検出し方位を定めるセンサーです。本蔵さんらは 小型 MI センサーを開発し携帯電話市場向けの電子コンパスとして広く使用されました。しかし技術上の欠点(狭い測定レンジ、ノイズ、ヒステリシス)を持ちその改善が求められていました。 GSR センサーはその欠点を改良する研究の中で発見・開発され、総合性能は MI センサーの90倍になります。さらに、そのことにより、磁気ジャイロが可能になり、ウェアラブルコンピュータなどの形態端末デバイスに標準装備されているモーションセンサーへの応用が期待されています。

3 医療応用

医療分野でも超高感度マイクロ磁気センサーのニーズが高まっています。一 例として、胃カメラ、カテーテル、血管内視鏡など生体内モバイル医療機器の先端に磁気センサーを内蔵し、その位置と方位を計測して装置をナビゲーション技術(磁気ポジショニング)の開発が進んでおり、 GSR センサーを使いこれらの超小型機器に内蔵可能な、超小型高感度磁気センサーの開発が進められています。

(表1) 各種 GSR センサーの画期的な性能と将来用途。

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2.3. 何故 GSR センサーは画期的な性能を持つのか

(1) 原理が画期的

MI センサーは、アモルファスワイヤにMHz帯のパルス電流を流すことにより、ワイヤ内に存在する磁壁が移動する事から生ずる効果を原理とするもの で、優れた感度を有するものの、この原理に発する欠点も存在する。(測定レ ンジ・直線性が狭い、ヒステリシス・ノイズが高い、大きなエネルギーを要する・・など)

一方、 GSR センサーは、ワイヤに GHz 帯のパルス電流を通電すると、ワイヤ最表面の電子スピンが超高速で回転することから生ずる効果(磁壁は移動 しない)を原理とするもので、磁壁移動に伴う上記欠点が改善される。

(2) 上記原理を発揮させるために以下の技術開発がなされた

a: 電子回路の開発:従来のMHz帯から GHz 帯の発振を可能にする電子回路の開発

b: マイクロ化:検出コイル内径とワイヤ表面の間隙を20μm( MI センサー)→3μm( GSR センサー)にマイクロ化

c: ワイヤの張力制御: MI センサーではワイヤへの張力はノイズの原因となるため、極力かけない。一方 GSR センサーでは積極的に張力をかけることより最表面のスピンの回転領域を増加させる。

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2.4 GSR 素子の原理と構造

1: GSR 素子の原理と構造

アモルファス合金ワイヤ(A)に GHz 相当の周波数を持つパルス電流(B)を流すと、ワイヤの最表面の電子スピン(C)が高速回転する。この高速回転する磁場が、ワイヤに巻き付けている検出コイル(D)に誘起する電圧(Vc)は、外部磁場(Hex)に比例することを原理とした、高感度磁気センサ

2: MI センサーとの違い

MI センサーは交流磁界(MHzレベル)の力でコア部の磁化が円周方向に回転することにより表皮部の円周方向透磁率が大きくなることを検出しているもので、周波数が大きくなるとコア部の磁化回転が発生せず MI 効果は発生しない。(磁壁の移動によるもの:周波数が 100 MHzを超えると渦電流作用により抵抗を受け磁壁移動は困難となる)一方 GSR センサーは GHz レベル( MI センサーの約100倍の周波数)のパルスのため、電流の通貨する表皮深さが 0.2μm程度となり( MI センサーの 1/10)電子スピンが高速回転することによって生じる現象。(磁壁の移動は生じない)

 3:  GSR センサーについての理論的解明

Dr上原らによって、 GSR センサーの理論的解明も進んでいます。 GHz の場合に磁壁移動は起らず、電子スピンのみが回転すると仮定して、LLG方程式(磁性体の磁化の動的過程を表す式)を用いてコンピュータ解析を行った結果磁界感度の周波数依存性などが実験と良く一致していました。

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2.5. GSR センサーの特徴

 1:周波数依存性

・ MI センサーは 1~100MHzにて出現 - 100Mzを超えると特性が低下する。磁壁移動とそれに伴う渦電流によりより高い周波数には追いつけない)

・ GSR センサーは 0.5 ~ 3 GHz にて出現し周波数の増加とともに特性が増加飽和する。(スピン回転のみによるため高い周波数に追従可能)

2: 数学的関係(正弦波)をもった理想的な出力特性

MI センサなどの磁気センサの出力特性は、非直線で数学的な関係式が存在しないという致命的な欠点がありました。そのため利用できる範囲が直線近似域のみで狭い(± 12Ḡ)ものでした。 GSR センサは、正弦波関数に従った出力特性を持っているため、直線性が良くてしかも利用できる範囲が測定領域全体となって大幅に(約 7倍)広がります。直線性も GSR センサの 10 倍も優れています。

3: センサのノイズ

MI センサは、磁壁移動(ノイズを伴う)による大きな磁化変化を活用するため、センサのノイズが大きくなります。一方、 GSR センサはノイズを伴わないスピンの回転を利用するため、センサのノイズは小さくなります。

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2.6. GSR センサー成立の条件

GSR センサーは MI センサーでは成しえなかった限界を下記の点で突破して成立しました。 MI センサーの技術の延長では実現できなかったものです。

1:回路( GHz 領域回路の実現)

MI センサーは MHz 領域の周波数をワイヤに通電することにより成立しましたが、最適な周波数域は 1 ~ 100 MHzとされ、それ以上では特性が低下することから、研究がなされていませんでした。本蔵さんは GHz 領域にて異なるメカニズムにより新たに特性が改善されるとの着想のもと、 GHz 領域発振回路・検出コイルの出力処理回路を開発し、 GSR センサーが成立しました。

2:マイクロコイルの実現

GSR センサーは最表面の電子スピンが作り出す小さな信号を検知する必要があり、そのためにはマイクロコイルの開発が新たに必要になり、本蔵さんは 3次元フォトリソ技術によりその課題を達成。ワイヤと検出コイル内径との間隙を 3μm( MI センサーでは20μm)、コイルピッチを 5μm( MI センサーでは30μ)と飛躍的に微細にしました。また、このため、素子製造面でもその製作精度(ワイヤの配列制度)±1μを確保することが必要になり新たにi MDC のワイヤ整列装置を開発したのです。さらに深さ 7μ程度の溝を形成してそこに GSR素子を作成して ASIC (特定用途向け集積回路 IC)と一体化して小型化を図る技術開発も進められています。

3:アモルファスワイヤの張力制御

MI センサーーはワイヤ内部の磁壁移動を原理としているため,ワイヤにかかる張力・歪は磁壁の移動に影響しノイズの原因になります。このため MIセンサーに使用するワイヤは熱処理を施して内部の歪を除去し、またワイヤを挿入する際にも張力をかけないように設計されています。 (12㎏/㎜2以下)一方 GSR センサーは最表面の電子スピンの回転を検出するため、磁壁の影響を受けないように、積極的に張力(76㎏/㎜2)をかけてワイヤを整列させる設計がなされノイズ・ヒステリシスが改善されています。

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3 事件について

3.1. 愛知製鋼の主張

(1) GSR センサーは MI センサーと同じ(またはその延長上のもの)

(2) マグネ社の「ワイヤ整列装置」は愛知製鋼の「ワイヤ挿入装置と同じ」

(3) 本蔵さんはホワイトボードに図示して愛知製鋼の「ワイヤ挿入装置の秘密」を漏洩した

3.2. 学会の場で技術論争をすべきです

α. GSR センサーと MI センサーは原理が全く異なる。

愛知製鋼は告訴のなかでこそ「 GSR センサーと MI センサーは同じ」と言っています。一方マグネ社は、日本磁気学会の講演大会、磁気センサ専門研究会、PIERS 国際会議などの学会の公開討論の場で GSR センサ原理を発表しています。 愛知製鋼の研究者の方がたも参加しており、そこでそのような発表・主張は一切していません。技術見解の差である以上、それは学会等で正々堂々と発表し、主張すべきで、公開討論の場で解決するものです。

なお、 GSR センサーの原理特許は日米両国において登録されています。さらに本蔵さんは、 GSR センサーの論文の内容を、同8月に開催された国際シンポジウムの招待講演の中で公表しました。世界的注目を集める GSR センサの研究を30年前の MI センサと同じだと主張するのは、真空管とトランジスタとが同じといっているようなものです。

β. 愛知製鋼の「ワイヤ挿入装置」では GSR センサー用の素子は作成できない

マグネ社の「ワイヤ整列装置」は, GSR センサーの製作に必要な機能と構造を備えるように開発されました。その必要な機能とは、

a)ワイヤに100kg/mm2 の大きな張力をかけて、基板上に整列・固定させる機能、

b)マイクロ素子(コイル内径とワイヤの間隙3μm)を作成するために ±1μの精度にてワイヤを整列させる機能です。

これらの機能は愛知製鋼の「ワイヤ挿入機」にはありません。

愛知製鋼の設備は

a)ワイヤに極力張力をかけないが、巻き癖をなおすに必要な10kg/mm2程度の最低限の張力をかけて、基板上に整列・固定させる機能。

b)マイクロ素子(コイル内径とワイヤの間隙3μm)を作成するために ±10μ の精度にてワイヤを整列させる機能です。

したがって、愛知製鋼の装置では GSR センサーは製造できません。

GSR センサーの作成に必要な機能と構造を整理しました。(表―4)

この表から,愛知製鋼の「ワイヤ整列装置」では, GSR センサーの素子を作成できないことは明白でしょう。マグネ社の「ワイヤ整列装置」は積極的に張力かけてノイズ・ヒステリシスをなくするという画期的なアイデアを実現する構造になっており、他方、愛知製鋼の「ワイヤ挿入装置」はできるだけ張力をかけないようにワイヤを取り扱うという従来の延長線上の考え方に基づく設計のものです。マグネ社のそれは原理的飛躍を伴う装置です。

愛知製鋼は、これまでの常識的理論でマグネ社の GSR センサの原理とマグネ社の整列装置の設計を理解して、技術の飛躍が理解できないために、 両装置の類似点だけから両者は同じだと勘違いしたものと思われます。ワイヤを基板溝に整列させるという目標(公知情報)が同じである以上、装置に類似点があるのは当然です。問題は、具体的機構上の差異と技術進歩の関係です。

 【参考】 表―4 MDC「ワイヤ整列装置」と愛知「ワイヤ挿入装置」の比較

γ. 本蔵さんはホワイトボードに GSR センサ開発に必要な装置の仕様を示していた。

当時本蔵さんは GSR センサー開発に必要な機能(100 ㎏/㎜2で引っ張り・維持する機能)を持つ装置を必要としていました。ホワイトボードに図示されているのはそのための方法・構造についての仕様を示したものです。これらの機能は、そもそも愛知製鋼の装置では不可能なところであり、従って、ホワイトボードに示されているのは,愛知製鋼の秘密などではありえず,もとより愛知の装置の秘密など漏らす必要などなかったのです。

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参考資料

【論文】

本蔵義信・本蔵晋平 :「GHzパルス電流を基礎にした高感度マイクロ磁気センサー "GSR センサー"の開発」
(PIERS 2018 in Toyamat、Japa、1-4 August 2018)

【専門図書】

(1)本蔵義信「 GSR 効果を活用した 超高感度マイクロ磁気センサーの開発」
『磁性材料部品の最新開発事例と応用技術』(第1版)技術情報協会(2018.03)

【研究会テキスト】

(1) 本蔵義信「第 1回 MSJ 超高感度マイクロ磁気センサー専門研究会テキスト(2015)

(2) 本蔵義信「第 4回 MSJ 超高感度マイクロ磁気センサー専門研究会テキスト(2016)

(3) Y.Uehara etc“Analysis on the dynamic process of amorphous wire using LLG equation”
 (Text book of 1th study group meeting of MSJ on super high sensitive micro Magnetic sensors” NO.1 (2015)

【特許】

(1)本蔵義信 「超高感度マイクロ磁気センサー」 特許 5839527 号 
2015年11月20日登録( GSR センサーの原理特許)

(2)Y.Honkura “High Sensitive Micro sized Magnetometer”
(United States Patent No. US 9、857、436、B2 、Jan.2.2018)
( GSR センサーの原理特許 米国)

Wikipedia:GSR センサ

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