1. 検察は愛知製鋼にはなかった設備名を用い,「創作」によって起訴した。
  2. 検察官主張の工程は愛知製鋼の真実の工程ではない
  3. 本蔵氏が開示した情報は本蔵氏のGSRセンサの開発アイデアであり,愛知製鋼の「営業秘密」ではない
  4. 検察官主張の工程は、愛知製鋼の営業秘密ではなく、愛知製鋼1号機の工程自体も「営業秘密」ではない
  5. ホワイトボード記載情報は、愛知製鋼から「示された」情報ではなく、本蔵氏独自のアイデアであった。
  6. 「技監」は役員にあたらない。
  7. 不正の利益を得る目的がない。
  8. 菊池氏と本蔵氏に共謀はない。
  9. 本蔵氏に故意はない。
  10. 本件控訴は棄却されるべきもの。

1 装置の名前:検察は存在しない呼称を用いている

検察官は、愛知製鋼の装置を「ワイヤ整列装置」と呼称しているが、「ワイヤ整列装置」とは「エフ・エー電子社」が自社技術で製作しマグネデザイン社に納入した装置で初めて呼称したものである。愛知製鋼社内では「ワイヤ挿入装置」「溝挿入装置」などと呼ばれていた。検察が「ワイヤ整列装置」とすり替えた呼称をすることは、本件が真実に基づかず,「創作」によって起訴されたものであることを示している。
 呼称の違いは装置の違いを意味し「ワイヤ挿入装置」はワイヤを溝に挿入するテクニックをノウハウとする装置のこと、「ワイヤ整列装置」はワイヤを緻密に並べるテクニックをノウハウをとする装置である。

2. 「検察主張のワイヤ挿入装置の工程」は「愛知製鋼の真実の工程」ではない

(1) 愛知製鋼の装置には「一定の張力をかけながら基盤上方で右方向に移動する」工程は存在しない。
 1号機では「張力」を細かに監視して制御する機構がない。3号機では張力をかけないで引き出し、先端ガイド溝で位置決めをするために弱い荷重をかけるだけで、張力を制御することはできない。
 本蔵氏は約10倍の張力で磁気特性の改善を狙っていたので、コンピュータによる張力制御装置が必要だった。本公判で「一定の張力」の内実が明らかとなれば、愛知の装置に「一定の張力をかける工程が存在しないことが明らかとなろう。
(2) 愛知製鋼の装置には「ワイヤを仮固定する」工程は存在しない。
 愛知装置には仮固定の機構はなく工程も存在しない。
本蔵氏の課題は 100Kg/mm2 という目いっぱいの張力をかけ磁気特性を改善するものであって、だからこそ、ワイヤを基準とすることができたのであり、その後に切断するためにワイヤの両端を固定する必要が生じた。
(3) 愛知製鋼の装置には検察官が主張する「仮固定したワイヤを基準線とする」位置決め調整工  程はない。
 「ワイヤを基準線とする」という表現は本蔵氏出願の特許の中で初めて使用された用語である。また、愛知装置は基板と機械装置の基準線に一致させてワイヤを溝に入れるものであり、「1本1本のワイヤを基準に精度 1μm で基板に位置決めする工程」ではない。愛知精度は 10μm である。
(4) 検察官の主張する工程では装置は作動しない(架空工程である)。
 実際の愛知装置では張力を解除後に切断しているが、検察主張の工程にはその記載がなく工程として意味をなさず,愛知製鋼の工程とも異なる。張力の解除なく切断すれば衝撃によりワイヤは溝から外れ工程として成立しない。検察主張の工程は架空である。
(5) 検察官の主張する工程は、西畑氏作成のタイミングチャートとも異なる。
(6) 愛知製鋼の装置は改造されていて、映像の装置は本件時のものか特定されていない。
(7) 結局、証拠手続きの始まる現時点においても、例えば、本件時の愛知製鋼のワイヤ挿入装置がどのような装置であったのか、特定されていない。

3. 本蔵開示情報は、自己開発アイデアであり、愛知製鋼の営業秘密を開示していない

(1) 3月5日打合せ
 基板上にワイヤを一定間隔で整列する装置の製作を聞いたところ、「エフ・エー電子」は張力を制御して極細ワイヤを送る装置をすでに納入した実績があると回答。本蔵氏は後日仕様概要の提示を約束した。
(2) 4月9日打合せ
 本蔵氏の装置への要求は [1] ワイヤに強い張力 ( 150Kg/mm2) をかける [2] 通電周波数をMHz からGHz へ上げて磁気特性を改善することにあった。 議論では[1] 「エフ・エー」は 150Kg/mm2 でも断線なしで引き出せると回答。 [2] 切断に関しては、本蔵氏の提案とは異なるハサミで切断可能と回答。[3] ステージの Y軸方向への移動精度についても、本蔵氏とは異なる最新のステージの提案があり採用した。さらに当時、本蔵氏はエフ・エ社 M氏に対して「ワイヤをどうやって溝に挿入するのか」と質問しており、愛知製鋼の秘密など開示していないことは明らかである。

4. 検察官主張の工程は、愛知製鋼の営業秘密ではない。さらに愛知製鋼1号機の実際の工程自体も営業秘密ではない。

(1) 愛知製鋼の1号機の工程には非公知性がない
[1] ワイヤ挿入装置1号機の工程の基本部分は、愛知製鋼が JST との契約に基づく国費による成果であり、公開・普及がなされていた。
i) 平成11年3月30日、愛知製鋼は JST との間で「車載用磁気インピーダンスセンサ」に関する「新技術開発委託契約」を締結した。
ii) 平成13年9月3日、愛知製鋼は上記の成果を報告した「開発実施報告書」を提出した。この報告書には検察官が主張するワイヤ挿入装置1号機の工程の基本部分が記載されていた。
iii) 平成13年10月17日、JSTは新技術の成果を公表。
iv) 平成13年12月11日、愛知製鋼とJSTは「新技術開発成果実施契約」を締結。愛知製鋼だけが独占的に成果の実施権をもつのは3年間で、その後は第3者に実施させることが出来る。
[2] 「エフ・エ電子」は、平成22年2月頃、一定の張力で引き出す工程の装置を八十島プロシードのたに製作しており、検察官主張の工程は汎用技術で非公知性がなかった。またFA電子松永氏は平成25年3月5日にその旨回答し、半年後マグネデザイン社に納入した。 ③よって、愛知製鋼だけの秘密工程などとは言えない。
(2) 愛知製鋼の基本工程に有用性はない
[1] ワイヤ挿入装置1号機の有用性は愛知製鋼の特許によってすでに否定されている。
[2] 1号機・2号機は、平成18年に大幅改造されて別装置に変質していて有用性はない。
[3] 本件時、愛知製鋼の時期センサ事業は赤字で事業からの撤退が求められていて、3号機の有用性も無くなっていた。

5 ホワイトボード記載情報は、愛知製鋼から「示された」情報ではなく、本蔵氏独自のアイデアであった。

(1) 技監は愛知製鋼が保有する機密情報にアクセスする権限はなかった。

(2) 本蔵氏が示した情報は「本蔵氏の頭の中にあった個人情報」で、愛知製鋼から示された情報ではない,むしろ平成27年GSR発見につながる基本アイデアが示されており、ホワイトボードに記されたアイデアが5年後に形となって、GSRセンサの画期的性能が学術論文として公表されている事実が何よりの証拠である。他方愛知製鋼は5年間基礎研究発表を行っておらず、MIセンサの陳腐化を裏付けている。

(3) これらの事実は、警察がマグネデザイン社の秘密を愛知製鋼の秘密と勘違いして、愛知製鋼に違法に開示したことを意味する。

ホワイトボード記載内容は警察の押収資料であり愛知製鋼内部に存在しない資料であるにも関わらずこれを根拠として行われた第2次告訴は、警察がマグネデザイン社の秘密を愛知製鋼の秘密と勘違いして、愛知製鋼に違法に開示したことを意味し、警察の要望にこたえる形でなされた告訴である。西畑調書で立証できると言い張り、いまだに会社内部の正式な資料が提出されていない。

(4) よって、ホワイトボード記載情報は、「愛知製鋼から示された情報」の開示ではなく、本蔵氏独自のアイデアを開示したものである。

6 技監は「役員」に当たらない

平成25年4月時点の本蔵氏の地位は「技監」であり「役員」に該当しない。

7 不正の利益を得る目的がない

本蔵氏はJSTの助成金制度を利用して、次世代MIセンサの研究開発成果を行い、その研究成果を愛知製鋼に還元しようとしていた。GSRセンサの開発に成功し、共同事業を愛知製鋼に申し入れている。事件後もその姿勢は変わっておらず、彼が不正の利益を売る目的がなかったのは明らかである。

8 菊池氏と本蔵氏に共謀がない

菊池氏はワイヤ挿入装置に関しては初歩的な知識だけで設計や工程に関する知識は皆無であった。業者の紹介や設備見積もりなどの生産技術部に関係した実務面で協力していただけである。ホワイトボードには仕様概要を本蔵氏から言われたことをそのまま記載したに過ぎず、本蔵氏との間に共謀はない。菊池氏は本蔵氏からのエフ・エー電子への説明について、営業秘密該当性を判断するだけの知見がなかった。

9 本蔵氏らに故意はない

本蔵氏が示した情報の中に、愛知製鋼の図面・工程などを記載した書類は開示していない。

10 そもそも、本件公訴は棄却されるべきものである

(1) 訴因の不特定は致命的な欠陥。営業秘密が特定されないままである。 検察は訴因の中核をなす「開示された営業秘密たる工程」の内容を裁判が始まってから次々と変更しており、営業秘密が特定されないままとなっている。

(2) 検察官は公訴提起後に補充捜査証拠作成を行っている。十分な証拠がないことを承知で公訴提起した。

(3) 検察官による起訴は公訴権の濫用に他ならず無効で、公訴は棄却されねばならない。

(4) 検察官が主張する「開示された営業秘密たる工程」は、JSTが保有する情報であり、愛知製鋼が保有する情報ではない。よって愛知製鋼は「犯罪により被害を被った者」ではなく告訴権者ではないため、本件公訴は親告罪にもかかわらず告訴を欠くものであり、公訴棄却判決がなさなければならない。