本蔵義信からのメッセージ ( 2021年 7 月 3 日 )

支援する会 各位

裁判は、検察側証人による立証が終わり、弁護団側の証人による反論がはじまりました。以下、ご報告申し上げます。

弁護団側証人による反論について
第1回6月16日反論では、マグネ社の装置を実際に試作した F 社の設計者が証言しました。F 社の証言では、マグネデザイン向けに製作した装置は、F 社のカタログで PR していた装置を改良し、ワイヤをより精密に整列させる機構を追加した装置であったと証言しました。
愛知製鋼のワイヤ装置は、幅1mmに2本程度ワイヤを張る標準的な装置であったが、マグネ社の装置は 1 mmにワイヤを 20本張る装置で、この点が 非常に難しい要求であったとのこと。
つまり、検察官の主張する工程 (愛知製鋼の営業秘密とされている工程) は製作側は一般的に思いつく工程で、難しいものではないと証言しました。
今回(6月30日)の反論では、元愛知製鋼 技監 清水証人が証言しました。清水証人により、当時の愛知製鋼における秘密管理の実態が明らかになりました。
2012年、菊池がマグネ社のために愛知製鋼のコピー機をリコーに発注しようとしていた、という事実は存在せず、当時、西畑が愛知製鋼の新たなワイヤ装置をリコーへ発注しようとしていたこと、また、その会議には菊池は同席していなかったことが証明され、検察側による主張が事実ではなかったことが明らかになりました。
以下、公判概要です。

  1. 争点(1)
    検察側は、「秘密の装置ワイヤ整列装置の秘密工程は、機密文書「QC工程表、作業標準、作業手順書」に記載されている と主張しています。
    しかし、清水証人は、 「岐阜工場で管理していた『QC工程表、作業標準、作業手順書』には、検察が主張するア)~キ)の工程は書かれていなかった。(文書の一つ一つを確認し ながら立証)また、ア)~キ)の工程を記載した社内資料は見たことがない。清水は、ワイヤ挿入装置の秘密の内容について、聞いていない。そのため、菊池にも引き継いでいない。」と証言しました。
    [結論]:検察側の根拠の柱の一つが崩れました。また、当方は、ア)~キ)の工程はマグネ社の装置の工程で、アイチ装置の工程ではないと反論しています。
  2. 争点(2)
    検察側は、「秘密の装置ワイヤ整列装置は岐阜工場の秘密管理エリアで秘密管理していた」 と主張しています。

      しかし、清水証人は、清水が愛知岐阜工場の工場長であった時期、ワイヤ装置を秘密管理エリアにしてしていなかったと証言しました。具体的な事例として、
    • Apple 社が 2012年 4月 岐阜工場監査に来社した際には、ワイヤ装置を見ることが出来るところまで案内していた。( 愛知側の「衝立にて隠すように指示していた」との主張への反論 )
    • 2004 年当時本蔵氏から、「岐阜工場の素子製造工程を部外者に見せるな」との指示を受けていたが、ワイヤ装置を限定して隠せとは言われていない。
    • 2010 年 RIM 社の監査時には製造ラインを見せた。静電気対策がとられている事を現地確認しないと発注しないとの RIM の意向を受け、本蔵氏の判断により100%全工程を見せた。
    • 2011 年 中部経済同友会の岐阜工場見学会があり参加者25名。本蔵氏が講演し工場を案内した。
    • 2012年 4月 Apple社の監査時には、RIM 社と同様に製造ラインを見せる予定でいたが、ワイヤ装置を見せないようにすべきと山本氏から聞いた鹿野氏( 当時の岐阜工場長 )から、衝立で隠すとの提案があった。そこで清水は本蔵氏に電話で相談し、「工夫できるならば良い」との判断により衝立はした。しかし、実際の工場案内では、本蔵氏はワイヤ装置が見える場所まで案内した。
    • 清水は、部外者に見せるなと言われていた「秘密のマイクロコイル工程」において重要なのはワイヤ整列装置ではなく、マイクロコイルを形成するメッキ工程である認識していた。
    [結論]:検察側は、ワイヤ装置を重大な秘密として特別管理していたと主張していたが、特別な秘密管理処置は取られていなかったことが証明されました。    
  3. 争点(3)
    検察側は、「菊池は12年12月4日リコーを呼び、本蔵と共謀してアイチ装置コピー機を発注しようとしていた。西畑はその会議に突如呼ばれただけである。」と主張しています。リコーの有滝氏は、「アイチ以外の発注と感じた」と証言しましたが、その証言は、愛知製鋼側の参加者が本蔵・菊池・西畑の 3 名であったことが前提でした。

      しかし清水証人は、
    • 「2012.12.4のリコーとの打ち合せには、愛知側は、本蔵、清水、西畑の3名が出席し、菊池氏は都合が悪くて出席していなかった。会議では、本蔵氏が背景、目的を説明、西畑氏が装置の仕様を説明した。愛知の業務であった。この事は、12月6日のDR(注:デザインレビュー)にて西畑氏が説明した資料とリコーに説明した内容が同じであること、2012.4に西畑氏がApple社向けの資料として用意した製品仕様や設備仕様とも合致しているのでわかる。」 また、清水は、2012.12.4の当日、有滝氏らより受け取った名刺を証拠として提出した。
    [結論]:検察は、本蔵・菊池は密かにマグネ社のワイヤ装置製作を計画していたとして、それを立証するため、2012.12.4 のこの会議で菊池がリコーへ愛知製鋼のワイヤ装置を説明し、コピー装置を製造依頼したと主張していますが、当日、菊池は不在。西畑氏が社内資料に基づいて説明したことが明らかになり、愛知製鋼の業務としてApple社向けに新たな装置を依頼していたことが証明されました。検察の主張は、事実無根であることが判明しました。
     
      以上 本蔵義信


改めて無実を訴える - 本蔵義信 - (2016.6.27)

第1回公判、昨年の6月27日から1年が経ちました。遅々と進まない裁判を横目に見ながらGSRセンサーの研究開発に注力すると同時に、出逢う方々に無実を訴えて過ごしてきました。あらためて私の思いを訴えたいと思います。

2013年4月9日、私は、装置メーカA社の担当者の方に、これまでのMIセンサーとは全く反対の発想に基づく次世代MI素子を試作するワイヤ整列装置の製作を依頼しました。私の新発想をホワイトボードにごく簡単な図を描いて説明し、それを基に新設備の仕様について討論しました。それだけの行為が、不正競争防止法で処罰される「営業秘密」の開示にあたるとは到底思えません。しかもその説明の内容は、一般的に知られていたセンサー設計情報に終始しており、そこには、愛知製鋼が秘密として管理していたマイクロ溝にワイヤを挿入する技術上の情報はいっさい含まれていません。

さらに、事件当時、愛知製鋼のMIセンサー事業は、他社の半導体技術をベースにした磁気センサーに押され、量産品の分野では競争力を失っていました。そこで私は愛知製鋼を中心とした日本のMIセンサー事業を立て直すことが急務だと考え、次世代MIセンサー開発プロジェクトの結成をJST(日本科学技術振興機構)に提案し、賛同を得てその準備を開始していました。愛知製鋼のMIセンサー事業の立て直しにひと肌なりとも脱ぐつもりで努力していました。

その後、名古屋大学と共同研究契約を締結し、経産省などの支援を受けて研究を進めた結果、2015年にGSR原理を発見しました。その年の7月には国際会議で招待講演し、10月のNHK報道と続きました。2016年に入って、私が設立したマグネデザイン社で独自の試作ラインを準備し、それを使って量産タイプのGSR素子の製作に成功し、愛知製鋼やトヨタ自動車にGSRセンサーの共同開発を5月に提案していました。その矢先の8月、愛知製鋼は提案を無視した上で、何の連絡もなく一方的に告訴に及びました。 この第1回目の告訴の内容は、2件の「犯罪事実」を言い立てたものでしたが、取り調べの結果、すべて、嫌疑不十分で不起訴になりました。ところが、A社との打ち合わせの際に使用した図の写真が強制捜査中に見つかり、それを愛知製鋼の秘密を開示した証拠だと勘違いした捜査当局はついに逮捕・起訴に及びました。この打ち合わせは、GSRセンサー発見のスタート点になった会議でした。MIセンサーと反対の発想、つまりMIセンサーは張力をかけると特性が低下するのですが、反対にGSRセンサーは強い張力をかけて素子を製作すると特性が改善するのではないかと考え、愛知製鋼の装置とはおよそ正反対の技術的思想に基づく装置を製作することを決めた会議でした。裁判開始から1年が経ちましたが、私としては、一日も早く各方面のこのような勘違いが解消され、裁判所によって公訴が棄却されることを期待しています。

現在、私は被告人の立場ですが、大勢の方がたの支援を受けてGSRセンサーの開発を進めています。ASIC回路仕様のGSRセンサーは、愛知製鋼のASIC仕様のMIセンサーに比較して100倍以上の高性能化と超小型化(すなわち大幅な低価格化)を実現しています。IOT時代に貢献する高性能磁気センサーとして商品化を進めたいと思っています。この8月には電磁波工学分野では最大のPIERS国際会議にも招待され、GSRセンサーの研究成果を発表する機会を与えられました。私はもちろん、家族もまた、肉体的、精神的さらには経済的にも非常に厳しい状況が続いておりますが、これまで以上に一層の努力を傾け、GSRセンサーを世に出すつもりです。これからも、どうか御支援をよろしくお願いいたします。

2018年6月27日 本蔵義信